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2009年8月24日 (月)

不完全性定理

1:意味論的には「Aである」か、「Aでない」かのどちらかに決まっている命題

2:「Aである」か、「Aでない」かのどちらであるかを形式的に判断できる命題

不完全性というのは、1であって2でない命題が存在することを言う訳です。

そして、「ある(緩い)条件を満たす形式的な数学体系は不完全である」ことを主張する意味論的な定理が不完全性定理です。(普通は、定理と言えば意味論的な定理のことを言います。形式体系における定理は「括弧付きの定理」です。これらは別物です。)

>ある数学的対象を公理化しても、不完全性定理により、それ自身もその否定も証明できない文が存在する。そこで、それかその否定のどちらかを新たな公理として追加する。新しい公理系にも、それ自身もその否定も証明できない文が存在する。以下、これをいくらでも繰り返すことができる。
http://d.hatena.ne.jp/wd0/20081116/p1

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数学ですらこの有様ですから、日常的な契約は推して知るべし、というものでしょう。(ま、とは言え、これはアナロジーですが。)

さて、「Aである場合に解雇できる」、「Bである場合には解雇できない」と規定した場合に、AかつBという事象が存在した場合には、この契約は矛盾しています。一方で、「Aでない」かつ「Bでない」という事象が存在した場合には、この契約は不完全です。

このような状況を回避する手っ取り早い方法は、

1:「Aである場合に解雇できる」、「Aでない場合は解雇できない」と規定する

2:「Bである場合に解雇できない」、「Bでない場合は解雇できる」と規定する

のいずれかのやり方をすることです。

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ここで、重要なことを書きます。実は、上記の「1」と「2」は論理的に区別できないのです。1番の「A」に「Bでない」を代入すると2番になり、2番の「B」に「Aでない」を代入すると1番になります。「Aでない訳ではない」=「A」であることに注意して下さい。

つまり、仮に1の形式で契約を書くように規制したとしても、もし2の形式で書けるならば、それと同じ内容のことを1の形式で書けるのです。

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